Timbuk2社のメッセンジャーバッグも使い始めてはや30年
Timbuk2(ティンバックツー)社のメッセンジャーバッグはシンプルで頑丈、飽きのこないオーソドックスなデザイン。使い勝手の良さも気に入って30年ほど前から使い続けている。
会社創業のストーリーもなかなかいい。
サンフランシスコのバイク(自転車)メッセンジャーとして働いていたロブ・ハニーカット(Rob Honeycutt)が1989年に創業。家庭用ミシンを89ドルで購入。
ひとり手作業でメッセンジャーバッグを作りはじめた。
「なぜ起業したのか?」という過去のインタビューで彼は「自転車メッセンジャーの仕事に疲れ果てていたんだ。誰のためにも働きたくなかったので、自分で始めることにしたんだよ。」と語っている。
自分もTimbuk2の創業した1989年、同じような動機で自分の会社、ナット&カンパニーを創業した。彼の心境にとても親密感を感じてしまう。
僕がTimbuk2のメッセンジャーバッグを初めて手に入れたのは1990年初頭のこと。思いのほか使い勝手が良く、それからサイズや素材の違うものを少しづつ買い足して、所有のTimbuk2のバッグはいつのまにか増えてしまった。
使うのはひとり。これでは「循環型社会を目指すあなたのライフスタイルは似非(えせ)ではないか」と他人から指摘されても返す言葉もない。
そんな後ろめたさもあり。最近は親戚筋や知人たちへ積極的にバッグを譲り、手持ちのバッグを少しでも減らそうと努力を繰り返している。
それでもいくつかの思い出深いバッグは手放せずに手元に残ることになる。
バッグの裏地ライナーにひび割れが・・
去年の夏のことだった。
Timbuk2のメッセンジャーバッグのひとつに異変が起こった。
バッグの裏地ライナーの崩壊が始まったのだ(写真)。
残っているバッグのなかでは一番新しいモデル(とはいっても2008年製造)である。
防水のTPU(サーモプラスチックポリウレタン)素材のライナーにまずひびが入った。ひびが徐々に全体に広がり、やがてカサブタが取れるように剥がれ落ちてきた。バッグの開け閉めのたびにひび割れたTPUの残骸がところかまわず粉のように散らばり、手がつけられなくなってしまった。
「ああ、もう捨ててしまおうか」と何度も思う。
だが、決心はつかない。
Timbuk2を愛し、長いことお世話になっている身としては捨てるという選択はない。
では修理するか。
バッグの裏地ライナーを交換修理しよう
Timbuk2社の日本代理店があると知って、修理をメールで問い合わせた。悲しいことに、返事は帰ってこなかった。
ユーザーの問い合わせに真摯に答えてくれない企業は信用ならない。そう思っている。
そんないい加減なユーザー対応の企業というのが要因ではないと思うが、先日、『TIMBUK2日本公式サイトは2020年10月31日をもちましてクローズさせて頂きました。』というウェブサイトの閉鎖と日本の輸入代理店の製品取り扱い完了のお知らせを代理店のウェブサイトで知った。
とくに驚きはしなかったが、日本国内で実物を手にとる機会がなくなってしまうのは残念である。
さて、ともかく修理である。
国内がだめなら直接、米国Timbuk2本社のリペアサービスにお願いしようと考えた。
インターネットの英文サイトで同じような「ひび割れ崩壊→インナー交換」の修理結果の書き込みをチェックしてみると、どうもTimbuk2本社の修理の評判がよろしくない。満足できるリペアサービスとは程遠いという書き込みが多かった。
結局、本社へ送って修理してもらうことはやめた。
しかし、 人生、頭を抱えることばかりではないのがありがたい。
救いの神が現れた。
バイクパッキングのバックを作っている自転車仲間の女神がバッグのライナー交換の修理を引き受けてくれたのだ!
ありがたいことである。
それにしてもTimbuk2
それにしても歴代のTimbuk2のメッセンジャーバッグはとっても頑丈だったのに。
なぜ2008年製のバッグのライナーはひび割れが発生し崩壊を起こしてしまったのだろう。
2005年、大きく成長したTimbuk2の会社と株式のすべてを、創業者のロブ・ハニーカットは2300万ドルで売却した。彼が会社を去ってしまったことが影響して品質の劣化を招いてしまったのかもしれないな。
すでに2002年にはTimbuk2の経営権は投資家グループが主導しており、バッグの一般モデルは海外生産、スペシャルモデルはサンフランシスコ工場で生産という、大量生産型のシステムに移行されていたので、それが要因になっていたのかもしれない。
ちょいと調べてみると、2008年頃にメッセンジャーバッグの内張りライナーの素材に変更があった。それまでのPVCビニール素材に替わって、TPU(サーモプラスチックポリウレタン)素材が使われるようになった。
その新しく採用されたTPU素材の質が悪かったためにライナーのひび割れ崩壊が起こったと考えて間違いないだろう。
もし、Timbuk2のメッセンジャーバッグを手に入れて使う機会があるなら、2008年以降のTPUライナーの崩壊にご注意を。
創業者がミシンを踏んで作っていた頃のメッセンジャーバッグ
Timbuk2の創業まもない1990年、創業者のロブ・ハニーカットが手作業で作ったメッセンジャーバッグが、縁あって僕の手元にある。デザインもクオリティも、当時と変わらないコンディションで元気に働いている。
2019年、サンフランシスコのTimbuk2社はなんとロサンゼルスのオフィス家具メーカーに非公開の価格で売却されてしまった。
2020年10月、とうとう日本でのTimbuk2の輸入販売代理店はなくなってしまった。
さてさて、Timbuk2はこれからどこへ行くのだろうか。