久しぶりにモノシリ沼の仲間とキャンプに出かけた。
11月下旬の長野。
標高は1,300メートル。
過酷な寒さは覚悟の上で、厳冬期の装備と心構えで過ごした週末の二泊三日。
何も特別なことをしない山の週末だった。
わかっちゃいたけど、気まぐれな山の天気
出発は生憎の雨。
テントとスリーピングバッグを詰め込んだ Synergy Works のバックパックを背負って、足元はワークブーツから長靴に履き替えて家を出た。
荷物が濡れないようにパックの中の荷物をビニール袋に収めた。
早朝6時42分の電車はそれほど混んではいなかった。大きなバックパックを背負った1970年代バックパッカー風のオジサンが、通勤客の迷惑になるかもしれないという憂鬱を避けられてほっとした。
待ち合わせ場所の駅で降りて、仲間と合流、クルマに乗り込んで雨のなか目的地へ向かった。
お昼をすぎたころには雨が上がった。太陽も出てきた。よしよし。
週末は晴れるという天気予報通りでよかった。
現地には午後3時に着いた。
11月の日没は早い。
大急ぎでテントとタープの設営。
それからコールマンのツーバーナーに火を入れてお湯を沸かし、炭を起こし、パンとスープの質素な夕食をとった。
陽が落ちると気温が急に下がる。
夜空を見上げると、星の美しさに感動。
初冬の山で見る星は格別である。
防寒対策をしっかりして、澄んだ空気の寒さのなかで過ごすのはなかなか楽しい。
そんな特別な非日常に浸っていると、山から吹き下ろす風が強くなってきた。
風は冷たく容赦ない。
瞬く間に天候は急変。
なんと雪が降りはじめた。
こんなはずではなかった。
まだ南の空は星が輝いているのに。今晩の天気予報は晴れだったはず。
突然の雪に、僕らのキャンプはさらに”非日常”となった。
まさかの雪。スノーキャンプ
朝起きるとテントの外は白いモノクロームの世界だった。
昨日の秋から景色は一変した。
これではスノーキャンプではないか。
肌を刺す寒さはカラダと気持ちの両方を引き締める。
このピリッとする感覚は悪くない。
「寒いとは思っていたけどね、まさか雪が降るとは」と顔を見合わせた。
誰も悲壮感はまったくない。嬉しそうなのである。
朝食の準備を始める頃には太陽が出てきた。
良くも悪くも山の天気は急変するもの。青空が戻ってきた。
降った雪は午前中に溶け、澄んだ山の空気が気持ちいい。
1970年代の古き良き時代のテント
仲間が持ってきた1970年代の古いテントを張り、メンテナンスをした。
1970年代に製造されたテントは機能美にあふれ、個性的で優れたデザインが多い。
眺めていても、使ってみても実に楽しい気持ちにさせてくれる。
その訳は開発した人の想いや考え方、縫製を担当した人の創意工夫が製品を通して伝わってくるのを感じるからなんだろう。
使っていて楽しい製品というのは素晴らしい。
キャンプサイトで暖かい夜を過ごすために
11月のキャンプとなれば万全の寒さ対策とそれなりの覚悟が必要だ。
それは過去の痛い経験から学んだ。
予想外の寒さにすっかり怯んでしまい、キャンプを止めて帰ってきてしまったというなんとも情けない出来事を思い出す。
今回のテントは30数年前に製造されとはいえ、4シーズン用のMOSSのリトルディッパー(第1世代)。山からの風雪を防ぐシェルターとしての役目を完璧に果たしてくれた。
粉雪が入ってくるようなファミリーキャンピング用のテントではなく、山岳用の4シーズンテントがあるといい。
そして、暖かい夜を過ごさせてくれたのは(これも古く製品だが)40数年前に製造されたザ・ノースフェイスの厳冬期用のスリーピングバッグ。当時のスペックによると-30度の気温でも使用できるクオリティである。今回は-2度まで温度が下がったが、寝ていて寒さを感じることはなかった。
それともう一つ、テントの下からの寒さを防ぐ断熱性の優れたマットがこの時期のキャンプには欠かせない。
最近の製品、サーマレスト・モンドキング 3D を使ってみたが、快適な寝心地と断熱性能の高さに驚いた。
骨董品とも呼べるテントとスリーピングバッグだが、当時とかわらない性能のおかげで寒くて眠れない夜という悲惨な状況にはならなかった。
気に入った製品を長く使うことは環境にも良いし、喜びもある。
古くても十分な機能を発揮するキャンプ用品に心より感謝したい。
暖かい陽ざしのなか、キャンプ撤収
2日目の夜も吹雪になった。
夜中の風も凄かったが、翌朝は晴天だった。
吹雪が嘘だったように積雪はすぐに解けた。
最終日が晴れてよかった。
午前中、気持ちのいい山のキャンプののんびり時間を満喫しながら、残った食料をたいらげ、テントや寝袋などを天日干し、キャンプ用品を片づけながら、だらだらと撤収作業と楽しんだ。
クルマへの荷物の積み込みを終え、三日間のゴミを処分した。
午後2時。キャンプサイトに残るキャンパーはいなかった。