「面白い自転車屋さんが近くにオープンするらしいよ。まだ準備中だったけどね。」と、隣町に住む自転車仲間のCARTOON MASTER氏から耳寄りな情報が入った。
さっそくお店の様子を見に行ったのが1月。まだ準備中だった。
開店準備で忙しいにもかかわらず、1970年代生まれのお店の主、登さんは手を休めてくれた。お互いを自己紹介。「2月中にオープンの予定なので、また寄ってみてください!」と見送られた。その日はお店のビジネスカードをいただいた。感じのいい店主と良い雰囲気のお店だった。
自転車屋さん GINO BICYCLE オープン
それからしばらくして3月。
『GINO BICYCLE』に立ち寄ってみた。
お店は開店営業していた。
オープンのお祝いを伝えると登さんは嬉しそうだった。
GINO BICYCLEは1980年代のマウンテンバイク(MTB)やパーツなどを扱っているが、古い自転車を売る旧車ショップというよりは、当時の自転車シーンの世界観を現代に蘇らせた新しい感覚の自転車屋さんといった雰囲気だ。
1980年代と言えばマウンテンバイクの黎明期である。その魅力に取りつかれた店主、登さんが彼独自の自由なセンスで作り上げたユニークなお店である。
お店の中には懐かしいパーツが並ぶ。古いマウンテンバイクを復活させる趣味(?)を持つ自分には、パーツ調達の選択肢が増えてありがたい。
本棚には小学館のアウトドア雑誌『ビーパル』など、1980年代のマウンテンバイク関連の記事が掲載された雑誌や自転車専門誌や本も多数あり。本は売り物ではなく、お店の貴重な資料。大切に保管されている。
「懐かしいなぁ」と本のページをめくる。リアルタイムで1980年代のマウンテンバイク黎明期を過ごしていた自分にはどれも見覚えのある、一度は目を通したことのある本ばかりだった。
1988年の自分に再会する
ふと見た本の背表紙に目がとまった。
『日本と世界の自転車。マウンテンバイク 1988年版』。
35年前、自分の書いた巻頭のカバーストーリー(特集記事)が掲載されいる本ではないか!
昔の恋人と突然再会したような驚きと懐かしさがこみあげてきた。
記事はアメリカ取材のエピソード、そこで感じた自由で活気あふれていた自転車カルチャーなど「アメリカの自転車事情」を伝える内容。記事を通して一生懸命に読者へ伝えようと時間を惜しまず努力していた当時の自分が蘇ってきた。
まさか、1988年の自分とここで再会できるとはね。
嬉しくなった。
この本を本棚に並べていた登さんに感謝。
1980年代の自転車カルチャーに触れる
GINO BICYCLEは、旧車マニアや「昔は良かったよな」的懐古主義をまったく感じない居心地の良いお店である。それはきっと、店主の登さんが1980年代の古き良きマウンテンバイク黎明期の空気感を理解していて、モノへのこだわりよりも時代の空気感のようなものを大切にしているからなんだろう。ホッとするお店である。
帰り際に、お店の開店を祝してプレゼントを渡した。1980年代に僕が使っていたものだけど、当時のマウンテンバイク生活でお世話になっていた品である。中古の品で申しわけないのだけれど。