田んぼのクロ塗りは水が漏れないように畦を土で固める作業である。
僕らの田んぼは2週間前にクロ塗りを終えたが、まわりのベテラン農家は今がクロ塗りの時期である。
田んぼからの帰り道、ときどき話しかけてお米づくりのことをいろいろ教えてもらうオジサン(自分もオジサンなのだが)に声をかけた。オジサンの田んぼのクロ塗りがとっても美しかったからである。
「きれいなクロ塗りですね。僕らも2週間前にやったんだけれど、なかなか大変で。クワに泥がくっついちゃってうまくクロ塗りができないんですよ。やっぱり、なんちゃってな僕らとベテランさんとは腕が違いますね。」と。
オジサンは「道具だよ。」と、さりげない一言。
聞けば、10年前に買った3万数千円の鍬(くわ)を使ってクロ塗りしているそうだ。
この3万数千円の鍬に秘密があるらしい。
鍬を見せてもらった。
重要なのは鍬の「反り(ソリ)」だそうだ。鍬の刃に微妙な反りあるので、粘土質の重い田んぼの土が鍬にくっついたまま離れないという困った状態から解放してくれるのだ。しかも畦のクロを滑らかに成型するためにも、この”反り”は便利だという。
確かに道具は大切なようだ。でも3万数千円の鍬を購入する決心がつくほど米づくりも畑づくりも気合が入っているわけでもないので、将来のための「知識」として聞いておこうと思う。
もう少し鍬の話しは続く。
この「反った鍬」のことをこのあたりでは『町田鍬』(まちだくわ)と言うのだそうだ。このあたりの粘り気のある土に向いている鍬なのである。特別に「田んぼのクロ塗り用』というのではないらしい。畑でも田んぼでも使う町田鍬なのだ。
町田鍬。
ネットで検索してみたが、詳しいことはわからなかった。また来週、オジサンを見つけて鍬のことを聞いてみようと思う。
ちなみに2週間前の僕らのクロ塗り風景はこんな感じだ。土が鍬にこびりついてなかなかうまくクロ塗りができなかった。道具も大切かもしれないが、肝心なのはやる人の腕前である。